845真空管パワーアンプ・キットSV-S1628Dの組み立てと熱対策

ステイホームで増えた趣味時間を使って、サンバレー(SUNVALLEY AUDIO)の直熱3極管 845を使った真空管パワーアンプキット「SV-S1628D」を組み立て終えました。845のトリウムタングステンのフィラメントは点灯すると煌々と光り輝くので、見ているだけで楽しめます。

目次

845真空管パワーアンプ・キットの組み立て

このキットは初段を12AU7、次段を12BH7Aで出力管845をドライブしています。付属する12AU7と12BH7AはElectro-harmonix、845はGolden Dragon 845 Premium Graphiteでした。高電圧電源部分がプリント基板化されており、詳しい組み立て説明書も付属しているのでスムーズに組み立てられます。半田ごてやナットドライバーなど組み立てに必要となる工具類の説明ページもあります。電圧チェックの際は1,000Vレンジがあるデジタルマルチメータ(テスタ)が必要です。

845のプレート電圧は実測で約840Vでした。電源スイッチを切ってもコンデンサの電荷が抜けきるまで時間をおいてから内部の部品に触るなど感電に用心深くなりました。
購入したキットに付属する出力管は845でしたが、シャーシ上の選択SWで211にも差し替えられます(845はFixed-Bias、211はSelf-Biasで動作)。曙光電子製(Golden Dragon製造元)やPSVANE(プスヴァン)製は、高価なNOS(ニュー・オールドストック)球と比べると、比較的求めやすい価格です。

秋葉原で入手した211ペア球(左) と キット付属の845ペア球(右)
秋葉原で入手した211ペア球(左) と キット付属の845ペア球(右)

組み立て中は主電源基板のB電圧ON用のリレー(942H-2C-12DS)が壊れたため秋葉原で調達して交換(壊れたリレーはニッパーで破壊してからプリント基板から端子ピンを取り外し)したり、12BH7Aとソケットの接触が悪くLchからボソッ、ボソッという音が出るといった原因がわかるまで悩んだトラブルはありましたが無事完成できました。

845真空管パワーアンプは発熱量が大きいので、密閉されたステレオラック内でなく、排熱の良いオープンスペースに設置しています。

はんだ付けが終わった直後のSV-S1628Dのシャーシ内部
はんだ付けが終わった直後のSV-S1628Dのシャーシ内部。

e-onkyo musicから購入したハイレゾ音源をポータブルデジタルオーディオプレーヤー(DAP)から845真空管パワーアンプに直接ライン入力しています。スピーカ(B&W707S2)から聴こえる音は透明感のある音色です。ジャズはもとより手嶌葵、ノラ・ジョーンズ、リンダ・ロンシュタットなど女性ボーカルとマッチしていると思います。

845真空管パワーアンプは重くて発熱量も多いといったイメージがありますが、この圧倒的な存在感を見ると愛着が湧いてきます。

真空管パワーアンプ・キットSV-S1628D
DAP(DX220)から845真空管パワーアンプにライン入力。 写真撮影のためにスピーカを845真空管アンプに近づけていますが、普段は845からの熱を避けるためにもっと離しています。

フィラメント電源を自作して発熱源を外出し(2021/2/20、4/23追記)

SV-S1628Dを動作させていると、シャーシが熱くなるとともに、化学薬品のような臭いがしてきました。新品の部品から出る一時的なものかとも思いましたが発熱源が気になります。

シャーシ内部では845に供給するフィラメント電源部のセメント抵抗とそのヒートシンク(アルミ放熱板)部分が最も高温でした。
sanwaデジタルマルチメータCD772に付属の熱電対を使って温度を測ると、セメント抵抗を固定している鉄板が約80℃、ヒートシンクの端が約74℃でした。シャーシ表面では出力管845が放つ放射熱などで電源トランス天面が約60℃、シャーシ表面が約45℃になります。

シャーシ内部の最も高温となるフィラメント電源部を外部電源として外出しすことにしました。
自作した外部電源は、キットとほぼ同じ回路構成(電源トランス、ショットキーバリアダイオードブリッジ、電解コンデンサ、セメント抵抗は50Wのメタルクラッド抵抗に変更)です。

自作した外部フィラメント電源
自作した外部フィラメント電源(10V、3.25A x2回路)。

ケースにはリードMK-300を利用しました。メッシュのケース上蓋にグロメット(KGE-3A)で除振して取り付けた12cm DCファンを低速回転して内部のケース兼放熱板を冷却しています。


SV-S1628Dとはネジ込み型コネクタ(6極プラグ&レセプタクル)を使った6本のケーブル接続です。
4本が左右の845用フィラメント電源線。2本がSV-S1628Dと外部電源の電源ON/OFFを連動するための信号線です。SV-S1628Dの電源スイッチを2回路に交換しており、その1回路にこの電源連動用の信号線につながっています。

SV-S1628Dの電源ON/OFFの信号をトリガーにして外部電源ケース内のSSR(ソリッドステートリレー)が外部電源のAC100VのON/OFFを連動制御します。

ネジ込み型コネクタでSV-S1628Dとケーブル接続
SV-S1628Dとケーブル接続用のネジ込み型コネクタ(右側)

フィラメント電源があった場所には、次に大きな熱源の390Ωのセメント抵抗(約65℃)を50Wのメタルクラッド抵抗に交換して元フィラメント電源用だったヒートシンクに載せています。
フィラメント電源部をシャーシ内から無くした効果のみとは断定できませんが気になった臭いは無くなり、快適なリスニング環境になりました。

フィラメント電源外だし後のシャーシ内部
フィラメント電源を外出ししたシャーシ内部。外部電源からケーブル接続して供給(左上)。 注)写真はRCA端子を増設してラインセレクタSWを追加後に撮影したものです。

外部電源に変更した後の電源トランス天面とシャーシ表面の温度測定(2021/4/24追記)

温度測定

キット付属のフィラメント電源(以下、内蔵電源)を外部電源に変更した後の電源トランス天面とシャーシ表面(845と845間の中間地点)の温度推移を測りました。
測定にはsanwaデジタルマルチメータCD772付属の熱電対を使いました。熱電対は、株式会社八光様のサイトを参考にさせていただき、約25mm角の寸法に切断した0.1mm厚のアルミ粘着テープで電源トランス天面に固定しています。

デジタルマルチメータで温度測定
熱電対をアルミ粘着テープで固定(写真は電源トランスの天面を測定中、白い部分)

測定結果

外部電源の場合の電源トランス天面の温度は、2時間で約48℃、5時間動作させた時点でも約56℃でした。
内蔵電源では電源トランス天面の温度は2時間で60℃に到達したのに対して、外部電源では緩やかな上昇になりました。
シャーシ表面の温度は外部電源と内蔵電源で明確な差は見られませんでした。

電源トランス天面とシャーシ表面の温度推移の測定結果
外部電源の場合の温度測定結果

掲載内容は本体の改造を推奨するものではなく、試みた経過や結果を紹介しています。
真空管を扱った機器は内部で高電圧が使用されています。内部のシャーシや配線に触ると感電するなど非常に危険ですので注意しましょう。

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